韓国の花火大会。写真は2019年のもの(写真:AP/アフロ)

(立花 志音:在韓ライター)

「お母さん、ソウルで花火大会やってるって」

 ゲームをしていたはずの息子が部屋から出てきた。中間試験が終わった高1の息子は、今週末は絶対ゲームに勝たなければならないのだと宣言し、食事もまともに取らず、部屋に籠っていた。

 今回の試験はかなりの苦戦を強いられたようで、すこぶる機嫌が悪い。そんなにこだわらなくてもいいのではないかと思うが、韓国に住む現役高校生には生死をかけた問題である。1年生の試験結果でも大学入試に影響するからである。

 大学入試全体の7割以上が推薦入試のような内申書選抜になった昨今、1回の試験結果が人生を左右すると言っても過言ではない。そして、日本のような部活がない韓国の高校では、成績順位がある程度、スクールカーストの基準になっているようだ。

 今、息子がゲームに熱中している理由というのが、勉強で結果を出せなかったから、ゲームではもう少し上位ランクに入り込みたいからだそうだ。

 勉強でも順位がすべて、ゲームでも順位がすべて。当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが、茶髪にルーズソックスで高校3年間を過ごした筆者には、考えられなかった世界だ。

 この国に住んでいると、何かの順位にこだわる以前に、人間的に、マナー的にどうなのかと思うことが多々ある。

 ソウルで3年ぶりの花火大会が行われた。韓国の花火大会は夏ではなく秋に行われる。長袖を着て花火を見ることは日本人には不思議な感覚である。

 もう、15年以上前になると思うが、ソウルの漢江沿いで初めて花火を見た時は、寒いし、つまらないしで結婚前の夫に、韓国で花火は二度と見ないと言ってしまったことがある。

 今回は「ソウル世界花火祭り~we hope again~」と副題まで付けられて、ソウル汝矣島で大々的に行われ各テレビ局でも中継されていた。

 長いコロナ渦にある市民たちの日常をいたわって、新しい夢と希望の花火をあげるというコンセプトだった。

 テレビを見ながら、この「世界花火祭り」というネーミングに引っかかった。何が世界なんだと検索してみると、韓国の花火だけではなく、イタリアとそして日本からも打ち上げ側として参加していたのだった。

 参加した国が3か国でも世界大会のようなネーミングになるのも、韓国ならではだ。