(立花 志音:在韓ライター)
「会計どうする? ブンパイにしよう。各自が連れの分も出してね」
昔、夫の友人たちと飲みに行った時、グループのリーダー各の男性が仲間に呼びかけていた。
夫の友人たちの飲み会なのだが、その日は妻や彼女を連れての集まりだった。韓国では男性同士の飲み会なのに、そこへ彼女や妻が同席させられることがよくある。お披露目なのか、彼女自慢なのか、動機はよく分からないが、それを通して彼女同士も気が合った場合は、仲良くなって交流が始まることもある。
筆者が夫と付き合いだした時は、友達の誕生日会、同業種の人たちとの定期的な集まり、ミニ同窓会と、とにかく連れまわされた。外国人、時に日本人だというだけで周りは興味津々、完全に見せ物だった。それが原因で大ゲンカをしたこともある。
今となっては笑い話だが、今も昔も日韓カップルあるあるである。
韓国本来の文化では仲間内で食事に行った時、お金を出すのは年長者もしくは地位が一番高い人である。昔は10人で行っても、20人で行っても、その中の年長者らしき人が出すものだった。
しかし、20年ほど前から韓国にも割り勘が浸透してきた。先の「ブンパイ」という言葉は、割り勘のことで日本語の「分配」が語源になっている。
ブンパイの語源が日本語であるということから、最近の若者が割り勘する時は「n分の1(1/n)」という言葉を使う。nは自然数ということだろう。彼らの会話を聞きながら、わざわざそんなに難しくしなくてもいいのではないか、と思うこともある。
しかし、日本統治時代に日本語が使われていたことに対する異様な劣等感が、その「わざわざ」を持ってくる。
韓国には今でも日本語の名残が残ってはいるが、通じるのは40代位までだろう。
「タライ」「タマネギ」「バケツ」「ゾウリ」という言葉は普通に使われていたし、そしてショッピングキャリーのようなものは「クルマ」と呼ばれていた。
時代の流れと共に、30代以下はそんなことも忘れてしまっている。それが普通で自然であろう。日本が韓国を統治していたのは100年前のことなのだから。
しかし、何が目的なのか、少しの日本式韓国語にも目くじらを立てる人たちがいる。