(立花 志音:在韓ライター)
「お母さん、明日、ハラボジの病院行こうと思うんだけど何号室? 病棟どこ?」
塾から帰ってきた息子が、相変わらず夜10時に食卓で宿題を広げている。「ハラボジ」というのは韓国語で「おじいちゃん」の意味だ。
「え、今さら? もう明後日退院するけど?」
「僕だって、風邪ひいてたじゃん。インフルエンザじゃなかったから、超具合悪いのに僕だけ学校休めないし。僕の方が死ぬかと思ったよ。本当に韓国社会××だよな」
筆者の周辺、特に子供たちの間ではインフルエンザが大流行している。息子のクラスでも4分の1くらいの生徒が感染して、息子も熱を出して病院へ行ったが、インフルエンザの検査結果が陰性だった。ゴホゴホ咳をしながらも、熱が下がったので次の日から学校へ行った。
韓国の高校は簡単には休めない。具合が悪い時は医師の診断書が必要だ。今回のようにインフルエンザに感染した生徒は3日ほど登校禁止になるが、運悪くただの風邪だった場合は学校に行かなければならない。禁止用語を発したくなる我が子の心中は、察するにあまりある。なんとも理解不能な世界である。
義父もインフルエンザではないのだが、ここ1カ月で2回入院した。もう80歳の高齢で、肺の機能がかなり低下している。冬が始まると定期的なケアが必要になることは本人も家族も分かっている。
11月に入り気温が下がってきたある日、突然、高熱が出てかかりつけの医者に行ったら、様子がおかしいので大きな病院に行くのがいいと言われた。
救急で(韓国は救急車を呼ばなくても、勝手に救急受付に入れる)総合病院に行ったら、熱があるので、とりあえずコロナの検査をしろとのことだった。検査結果が陰性だと確認できてからでないと、診療も入院もできないと言うのだ。
そして、その日は土曜日で担当医が不在で、詳しい検査などができないことが分かった義父は、家に帰ってきてしまった。とりあえず解熱剤を飲んで週末を過ごした。しかし、月曜日になっても熱が下がらないので、義母が救急車を呼んで、市内にある大学病院に行った。