日本だけでなく、北朝鮮にも年号がある。写真は新元号「令和」を発表した官房長官時代の菅義偉氏(写真:AP/アフロ)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 日本には年号と西暦があり、天皇がお亡くなりになると年号が変わるが、韓国には年号はなく、西暦のみの表記だ。それでは、北朝鮮はどうかと言うと、実は年号が存在する。

 北朝鮮の年号「主体年号」は、北朝鮮を建国した金日成(キム・イルソン)氏の生まれた1912年を元年とする紀年法である。紀年法とは、特定の年を起源にして年数を数える方法で、起源の根拠に従って、政治的な紀年法、宗教的な紀年法、天文学的な紀年法などに分かれる。

 年号も、王が即位した年を基準にした、一種の紀年法である。

「主体年号」の発案者

 北朝鮮で主体年号が初めて提案されたのは、1988年のことだ。当時、北朝鮮の天道教青友党党首で、朝鮮天道教中央指導委員長や朝鮮宗教家協議会会長、祖国平和統一委員会副委員長を務めた崔徳新(チェ・ドクシン)氏が、自身の著書『金日成、彼は天主様』の中で、初めて主体年号の使用を提案した。

 朝鮮の代表的な正統宗教「天道教」の教理によって、金日成氏を「朝鮮の天主様」と褒め称え、彼を崇拝するという意味で、北朝鮮で使われている「主体」という言葉を取ったのだ。

 1914年9月17日、平安北道義州郡に生まれた崔徳新氏は、もともとは韓国軍の将官であり、韓国の第9代外相を務めた人物である。