韓国の最大野党「共に民主党」の李在明代表(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

「掘々怪(パパケ=掘っても掘っても怪談がでてくる)」と揶揄されるほど多くの疑惑で検察調査を受けている「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表にまた別の疑惑が浮かび上がった。米国務省が「注意深く見守っている」と明らかにした「韓国企業の対北朝鮮不正送金事件」が、実は李在明氏を大統領に当選させる目的で行われたのではないかという疑惑だ。

 これに対して李氏は「検察の新作小説だ」と反論し、疑惑を強く否認しているが、検察は北朝鮮に不正送金を実行した事業家の証言と証拠書類を確保したとし、「疑惑立証」に自信を示している。

暴力団員から企業集団の首領へ

 李在明代表を対北朝鮮不正送金事件に引きずり込んだ人物は、組織暴力団出身の企業家のキム・ソンテ氏。1968年に全羅北道南原に生まれたキム氏は、決して恵まれたとは言えない家庭環境の中、6人兄弟の長男として育った。幼い頃から全羅北道全州地域を牛耳る暴力組織の「全州ナイト派」の組織員となり、2006年には不正賭博場を運営した容疑で起訴された前歴がある。

 そんなキム氏は、07年にソウル江南(カンナム)で「東京アセット」という私債事務所を設立し、不正貸付業を始める。KOSDAK市場で株価操作をしながらM&Aを主導する人々に、月10~20%を越える高金利で金を貸し付け、大金を手にした。

 高利貸しで財を成したキム氏はこの私債事務所を「レッドティグリス」と改名し、特殊目的法人(SPC)として事業登録する。さらに2010年になると、経営難に揺れていた下着メーカー「サンバンウル」を買収し、企業家に変身した。ところが2013~2014年に「サンバンウル株価操作事件」の主犯として検察の捜査を受け、裁判では懲役3年・執行猶予5年の有罪を宣告された。

 その一方でサンバンウルはその後、カメラモジュールメーカーのSBW生命科学、下着メーカーのビビアン、コ・ヒョンジョンやチョ・インソンらの韓流スターが所属する芸能事務所「IOKカンパニー」などを相次いで買収、7つの子会社を抱える企業集団に成長した。組織暴力団出身のキム氏も韓国財界序列57位の企業の代表になったのだ。