(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
徴用工問題を巡る日韓局長級協議が2023年1月30日にソウルで開催された。日本からは外務省の船越健裕アジア大洋州局長、韓国からは外務省の徐旻廷(ソ・ミンジョン)アジア太平洋局長が出席した。
この日の協議では、韓国政府が検討している韓国の財団が日本企業の賠償を肩代わりする案について、日本側の対応などが話し合われたとみられている。協議時間は3時間ほどだった。
日韓協議2日前の1月28日、共同通信は「肩代わり案が正式決定すれば、日本政府は過去の政府談話を継承する立場を改めて説明して『痛切な反省』と『おわびの気持ち』を示す方向で検討に入った」と報じた。同日、産経新聞も「徴用工問題次第で韓国の『ホワイト国(現:グループA/輸出の優遇対象国)』を日本政府が検討している」と報じている。
これらの報道を見た国民からは、「岸田首相に日本が滅ぼされる」「日本は何度同じことを繰り返すんだ」という批判の声が続々と上がった。筆者もそう感じたうちの一人で、日韓協議で日本が「また」韓国に折れるのではないかと、絶望的な思いだった。
だが、この協議で日本は韓国に譲歩することなく、韓国は手ぶらに終わった。実際、韓国メディアは「手ぶら終了」だと報じている。
韓国政府は「韓国財団による賠償肩代わり案」を検討しているというが、外交当局者からは「日本企業による賠償」「日本企業からの直接謝罪」「岸田首相からの謝罪表明(過去の首相談話の継承)」が要求として出されたようだ。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、日本による謝罪と賠償をあきらめていないということである。