韓国・尹錫悦大統領(写真:ロイター/アフロ)

 ひときわ寒さが厳しいこの冬、ウクライナ戦争などの影響によるエネルギーコストの急騰に、世界の人々が喘いでいる。韓国も例外ではない。平均で5%程度の物価上昇に直撃されているが、とりわけガス料金、電気料金、公共交通料金などが暴騰している。これに韓国国民の間から大きな不満が漏れ始めている。

「文在寅政権の時の方が暮らしやすかった」

 この1年で、韓国の都市ガス料金は実に40%以上も急騰した。韓国では冬の暖房には主に都市ガスが用いられている。そのため、まさに今現在、都市ガス料金の高騰は韓国の一般家庭の財布を直撃している。筆者が先日会った知人もガス料金暴騰に怒りを爆発させていた。

「去年と比べるとガス料金は倍になった。やはり尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は金持ち優遇の政権だよ。ただでさえ物価高騰で暮らし向きが厳しいところに、金持ちが納める総合不動産税や法人税は減免しているのに、われわれ庶民も払わなければならない電気やガスの料金は一気に引き上げた。なぜこんなことをするのか。私のような庶民には、むしろ文在寅(ムン・ジェイン)政権の頃の方がずっと暮らしやすかったよ」

 大学生の息子を持つこの知人は、文在寅政権当時、曺国(チョ・グク)法務部長官の子供の入試不正疑惑が浮上すると、光化門で繰り広げられた「曺国退陣デモ」に加わった。そして常日頃から、文在寅政権の「ネロナンブル」を強く批判していた彼は、去年の大統領選挙では躊躇なく尹錫悦候補を選んだと私に明かしていた。

 それが、尹錫悦政権発足からわずか8カ月後には「文在寅政権時代のほうが良かった」と嘆いている。そんな彼の豹変ぶりを見ていると、都市ガス料金の引き上げが国民世論にどれほど深刻な影響を及ぼしているかを実感させられる。