韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が、北朝鮮スパイ団摘発に大々的に乗り出している。
今年早々に、済州島で暗躍する地下組織を検挙したのに続き、目下、全国で同時多発的な捜査が行われている。これは朴槿恵(パク・クネ)政権初期の2013年、李石基(イ・ソッキ)統合進歩党議員らによる内乱陰謀事件以来の大規模な対共捜査で、摘発対象となる北朝鮮スパイ団の規模も、62人が拘束された1992年の朝鮮労働党中部地域党事件以後、最大規模になるのは確実と見られている。
アンコールワットで接触
最初の摘発は1月9日に行われた。済州警察庁は、進歩党済州道地域党の事務所の家宅捜索によって、所属党員の数人が北朝鮮の指令を受けて「ヒヨッツ、キヨク、ヒヨッツ」という地下団体を結成し、反米活動や尹錫悦政権転覆活動などを行ってきた証拠を入手した、と発表したのだ。
進歩党とは、先述の内乱陰謀事件で違憲政党判決を受けた「統合進歩党」が強制解散させられた後、その核心勢力だった京畿東部連合と蔚山連合などのNL系(学生運動が盛んだった80年代に民族解放を掲げて組織された運動勢力で北朝鮮の主体思想を信奉)が主軸になって作った実質的な統合進歩党の「後身」だ。
極左に分類される彼らは、国会議員を擁していない「院外政党」だが、昨年の地方選挙では蔚山市東区庁長をはじめ1人の基礎自治体の首長と20人の基礎自治体の議会議員を当選させ、院内政党の中で最も革新系に位置づけられる正義党を上回る善戦を見せた。
韓国の防諜当局によれば、その進歩党幹部のA氏は、2017年7月カンボジアのアンコールワットにおいて北朝鮮労働党の対南工作部署である「文化交流局」工作員から暗号や通信法などについての教育を受け、帰国してから済州労働界幹部のB氏と農民運動をしていたC氏など2人を抱き込み、「ヒヨッツ、キヨク、ヒヨッツ」を組織したという。