(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
読売新聞の2023年1月17日付の夕刊「ラウンジ+」というコーナーに、駐日韓国大使の尹徳敏(ユン・ドクミン)氏が取り上げられた。内容は、尹徳敏氏が日本のラーメンをどれだけ愛しているか紹介するものだった。
尹徳敏氏は約30年前に慶応大学に留学していた時、日本のラーメンに出会ってその魅力にとりつかれたそうだ。大使として2022年7月に来日してからは、大使館のインスタグラムで自らラーメンを食べる動画をときどき投稿している。最近のお気に入りは煮干しラーメンらしい。
記事の締めくくりには、「ラーメン動画の投稿を通じて願うのは、『戦後最悪』と言われた日韓関係の改善だ」「まずは動画を見て親しみを感じてもらい『国民の交流を深める関係を作りたい』と熱い思いを込めている」と書かれていた。
この記事だけを見ると、「尹徳敏という大使は、なんて日本好きなんだ」「日本の良さを発信してくれてありがたい」と、好感を持つ人が少なくないだろう。
尹徳敏氏は駐日大使に就任する前から「知日派」として注目を集めていた人物だ。反日色の強かった姜昌一(ガン・チャンイル)前大使よりも、日本に有益に働いてくれているように感じる。実際、日本では「姜昌一より尹徳敏の方がマシだ」という声をよく聞くほどだ。
だが、尹徳敏大使は日本に対して厳しい見解をたびたび示している人物であることを忘れてはならない。
尹徳敏氏は駐日大使に内定したあと、「慰安婦被害者」代表格の李容洙(イ・ヨンス)氏と非公式で面会した。どのような会話を交わしたのか、非公式であるため公表されていないが、記者からの「政府が変わり慰安婦問題がうまく解決されると思うか」という質問に対して、「政権が変わっても変わっていなくても同じだ」「何とかこの問題を解決しなければならない」と語っている。
この言葉から、尹徳敏氏は慰安婦被害があったと認識している。1965年の日韓請求権協定や2015年の慰安婦問題日韓合意をもってしても、この問題は未解決だと考えていることがわかる。