1月10日、AP通信のインタビューに応じる韓国の尹錫悦大統領(写真:AP/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 尹錫悦大統領は、国民との対話や官民の経済会議を通じ、2023年の韓国経済社会の重点課題を明らかにした。年金・労働・教育の3大改革である。だがこれとは別に、尹大統領は第4の改革を推し進めようとしている。それが「市民団体の改革」だ。

 日本人の感覚からすれば「市民団体の改革」と言われても、そんな大それたことなのかと訝しく思うかもしれない。だが、実は韓国の市民団体は日韓関係改善にとってとんでもなく大きな障害となってきた経緯があるのだ。

市民団体を野放しにしてきた文在寅政権

 市民団体の多くは健全な活動をしている。だが、中には政府の補助金や市民からの寄付を不正に使用しているものがあると糾弾されているものもある。また、北朝鮮の主張を宣伝したり、北朝鮮と結びついて社会の混乱を招く活動をしたりしている団体がある。

 その中には反日活動を煽る市民団体も存在する。日韓を離間させることで北朝鮮の政治的な思惑に呼応しているのだ。日韓関係を著しく損なう活動を行ってきたのが、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(略称:正義連。旧「韓国挺身隊問題対策協議会〈挺対協〉」)である。挺対協時代から彼らは毎週水曜日に日本大使館前で抗議活動(水曜集会)を行うことで、あたかも元慰安婦たちの代表であるかのように振る舞うようになり、慰安婦問題に関する日韓の和解を妨害してきた。

 これまでの歴史問題に関する日韓間の交渉を振り返ると、日韓で合意が成立しても、市民団体の反対で、韓国政府が合意案から後退し、新たな要求を突き付けてくることは珍しくなかった。

 しかも、文在寅政権時代には政府がこうした市民団体の活動を支援しており、こうした団体が法律に則った適切な活動をおこなっているか確認してこなかった。そうした文在寅政権の態度が市民団体を一層増長させ、何をしてもいいかのような行動を取らせることになった。

 日本企業の資産の現金化が問題となっている徴用工問題でも、徴用工支援団体が韓国政府の解決案に反対の姿勢を貫いている。こうした主張が通る限り、日韓の歴史問題の解決はない。