1月1日、新年のあいさつを述べる韓国の尹錫悦大統領(提供:South Korea Presidential Office/AP/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国の尹錫悦大統領は昨年5月の就任当初から、日韓関係の修復への強い意思を示してきた。しかし、そこには乗り越えなければならない壁があった。徴用工問題の解決だ。

 ここまで尹大統領も、日本政府と徴用工およびその支援団体との板挟みになり、問題解決の糸口さえ見いだせないでいた。だがここにきて事態が大きく動き出しそうな兆しが見え始めた。ここ最近の韓国の動きを見ると、尹大統領は、仮に徴用工が満足しない案であっても、それに基づいて問題を解決する意思を固めたようなのである。

徴用工側の主張では解決はできない

 韓国メディアの報道によれば、その解決方式とは「徴用工問題は日韓の間では解決済みであり、韓国側で解決すべき」とする日本政府の主張に概ね沿ったものになるようである。これに対し、裁判に訴え、補償を求めてきた徴用工の人々は反発を強めている。韓国政府が検討している案について、「賠償金の財源を韓国企業による寄付金で確保しようという」ものと報じたハンギョレ新聞は、「加害者を排除した恥辱的方策」との見出しをつけて強く反発している。

 それでも尹錫悦大統領の問題解決に向けた決意は変わらないようである。中央日報は、韓国政府は解決策を近く発表し、被害者(徴用工の意)を事後に説得する方式を検討していると報じている。

 韓国政府にとって、現在検討中の解決策に徴用工側が反発することは想定の範囲内であろう。韓国政府の外交当局者はメディアの取材に「すべての被害者が完ぺきに賛成できる案を持ってくるのは現在では不可能に近い。ひとまず被害者の要求の半分でも満たすために両国が交渉中」と指摘している。

 その意味するところは、韓国政府として日本側に「誠意ある対応」を求める一方、まず韓国側が解決策を提示し、日本側の対応と合わせて徴用工を個別に説得する方式に切り替えたのではないかと思われる。