韓国領空を領空侵犯した北朝鮮の無人機。写真は2017年6月に韓国国防省が公開したもの(写真:AP/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 2022年12月16日、韓国外交部の当局者は、日本が閣議決定した国家安全保障戦略など安保関連3文書で反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記したことについて、次のように指摘した。

「朝鮮半島を対象とする反撃能力行使のように、朝鮮半島の安保および国益に重大な影響を及ぼす事案については、事前にわが国との緊密な協議と同意が不可欠だ」

 同日には、今度は韓国軍が「韓国の領土を『朝鮮半島とその付属島しょ』と明記した憲法第3条に基づき、北朝鮮は韓国の領土となっている。このため、韓国の承認を得ず北朝鮮を攻撃することはできない」と主張。日本政府の方針を否定するかのようなコメントを出した。

 屁理屈を言うようだが、韓国のこの主張を尊重した場合、北朝鮮が放った弾道ミサイルは韓国が放ったことにはならないだろうか。

 北朝鮮の弾道ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)内に何度も落下し、時には日本列島をも越え、我々の生活に支障をきたしている。韓国政府が日本政府の方針を否定するのであれば、国際社会を脅かす北朝鮮の言動について、“同じ領土”である韓国が責任を取るべきだろう。

 日本の国家安全保障戦略についての韓国側の主張は、周知の通り矛盾している。

 12月26日、北朝鮮の無人機5機が南北軍事境界線を越えて韓国の領空を侵犯した。韓国軍合同参謀本部の発表によると、北朝鮮の無人機侵入を受けて、韓国軍は戦闘機と攻撃用ヘリコプターを発進。ヘリコプターが100発もの射撃を行った。

 北朝鮮が韓国領だと主張するのなら、北朝鮮から飛来したものは領空侵犯ではないだろう。

 韓国と同じように、北朝鮮も韓半島全体が北韓の領土だと言明し、南韓地域を未解放地域とし、北韓が韓半島の唯一の合法政府であると宣言している。互いに互いの領土を自国領だと主張しながら、「領空侵犯だ」「領海侵犯だ」と言って罵り合うのは何だか矛盾しているような気がしてならない。