韓国の尹錫悦大統領(写真:AP/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 2022年の韓国にとって最大の出来事は、3月の大統領選挙で国民の力の尹錫悦氏が勝利したことである。

 尹大統領が大統領就任直後から取り組んできたのは、文在寅政権が作り上げた韓国を根幹から変えることであった。その根底にあったのは、このままでは韓国はいずれなくなるのではないかとの危機感のように思われる。

文在寅時代に左傾化が激しくなった韓国

 前大統領の文在寅氏は極端な左翼主義志向の政治を行い、革新系勢力の利益確保に躍起となった。青瓦台に居座り、国民の声を聞かず、帝王的な独裁体制を築いた。

 まず文政権は、北朝鮮の非核化意思を誇張し、脅威を黙殺することで、韓国の安保を弱体化させた。

 経済政策においては、労働組合に肩入れし、民主労総の過激な行動を助長、企業の自由な経済活動を阻害した。その民主労総が目指したものは、国民生活の安定ではなく、労組の権限拡張・保守政権の瓦解であった。

 格差是正を謳い、「所得主導成長戦略」を描いてきたが、その経済政策はことごとく失敗した。その失敗を財政のバラマキ政策で取り繕い、国民に取り入ってきた。