北朝鮮は12月18日、偵察衛星打ち上げの実験と称して、西海衛星発射場から東に向けて2発、11時11分頃と11時52分頃にミサイル(以後ロケットと表記)を発射した。
併せてロケットの発射状況と撮影場所とみられる写真を公表した。
日本の防衛省は、「北朝鮮がミサイル2発を発射し、1発目は最高高度約550キロで飛翔距離約500キロ、2発目も1発目と同じ最高高度・飛翔距離であった」と発表した。
北朝鮮ミサイルの発射~飛翔~着弾
(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイト=https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73273 でお読みください)
北朝鮮は、2021年1月の党大会で、軍事偵察衛星の運用実現を目標に掲げ、今年の2・3月に、偵察衛星のための試験を実施したことを発表していた。
今回の2発のロケット発射で、偵察衛星実験に関する試験を実施したようだ。
北朝鮮が偵察衛星のどのような実験を行ったのか、どのレベルに達しているのかについて考察する。
1.北朝鮮が発表した「実験」を検証
北朝鮮の宇宙開発局によれば、この重要なテストの基本的な目的は、衛星写真とデータ伝送システム、および地上管制システムの能力を評価することとあった。具体的内容は以下の通りだという。
北朝鮮が偵察衛星開発のために今回実施した内容について、掲載された写真と併せてそれぞれに解説をつける。
①宇宙空間に打ち上げた装置は、20メートルの分解能(解像度)がある試験用のパンクロマティックカメラ1台とマルチスペクトルカメラ2台、映像送受信機と各帯域の送受信機、操縦装置と蓄電池などである。
(解説)地上管制の指示を受けて写真を撮影し、その画像を地上に送る装置をロケットで打ち上げている。3台のカメラが搭載されているにもかかわらず、実際に公開した写真は、カラーではなく白黒であった。
②高度500キロまで到達した後、各種撮影装置に撮影指令を出した。
(解説)高度500キロは、偵察衛星が周回する高度である。偵察衛星が周回することが予想される高度に達した時に、カメラのスイッチを作動させた。
③姿勢制御の指令を出した。
(解説)衛星の姿勢を変更して、撮影したい地域、具体的にソウルの青瓦台や仁川の施設に、カメラを向けることができた。
④情報伝送装置の処理能力と安全性を評価した。
⑤撮影技術と通信データ処理および伝送、地上管制及び操縦技術を確認した。
(解説)衛星から送信した写真のデータを地上の管制所で受信することができた。
衛星とカメラ撮影の動き(イメージ)