(写真提供:ヤッホーブルーイング、以下同)

 心身の健康だけでなく、社会的にも良好な状態にあることを意味する「ウェルビーイング」。最近では「顧客のウェルビーイングを起点とした商品・サービス開発」への関心も高まっている。この新しい潮流は、日本人のライフスタイルをどのように変えていくのか? またそこからどのような産業やマーケットが生まれていくのか? 消費者目線で社会トレンドをウォッチし続けてきた統合型マーケティング企業、インテグレードのCEO・藤田康人氏が、ウェルビーイングに取り組む実践者たちとの対話を通じて、これからの新しいビジネスを考察する。
 今回は、クラフトビールからウェルビーイングを実現したヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)の井手直行社長に、事業の世界観や将来性について聞いた。

井手 直行(いで・なおゆき)氏
ヤッホーブルーイング代表取締役社長
1967年(昭和42年)生まれ。ニックネームは「てんちょ」。国立久留米高専を卒業後、電気機器メーカー、広告代理店などを経て、1997年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。地ビールブーム終焉の後、再起をかけ2004年楽天市場店の店長としてネット通販事業を軸にV字回復を実現。2008年より現職。フラッグシップ製品「よなよなエール」を筆頭に、個性的なブランディング、ファンとの交流にも力を入れ、現在(2021年時点)まで19期連続増収、クラフトビール国内約600社の中でシェアトップ。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに、新たなビール文化の創出を目指している。著書に『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』(東洋経済新報社)。

毛色がちがう!ヤッホーブルーイングのビールたち

藤田康人氏(以下、敬称略) ヤッホーブルーイングのユニークなクラフトビール、私も大ファンです。今年(2022年)9月に発売した拙著『ウェルビーイングビジネスの教科書』(アスコム)でもご紹介させていただきました。

井手直行氏(以下、敬称略) ありがとうございます。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに、他のビールメーカーとは、全く違う戦略を取りながら歩んできました。

藤田 貴社のビールはとにかく他と毛色がちがう・・・といいますか。今日はぜひ、そのあたりの話をお聞きしたいんです。

 ミッションの中に“幸せ”というフレーズがありますが、ヤッホーブルーイングはまさにクラフトビールで人々をつないでいると思います。人のつながりから得られる幸せは、メンタルヘルスに不可欠であり、ウェルビーイングの視点から見ても非常に貴重な取り組みだと思います。ビールという商品だけで勝負してきた他社とは異なり、御社の取り組みは新しい価値を提供しているのではないかと。