心身の健康だけでなく、社会的にも良好な状態にあることを意味する「ウェルビーイング」。最近では「顧客のウェルビーイングを起点とした商品・サービス開発」への関心も高まっている。この新しい潮流は、日本人のライフスタイルをどのように変えていくのか? またそこからどのような産業やマーケットが生まれていくのか? 消費者目線で社会トレンドをウォッチし続けてきた統合型マーケティング企業、インテグレードのCEO・藤田康人氏が、ウェルビーイングに取り組む実践者たちとの対話を通じて、これからの新しいビジネスを考察する。
今回は、ブランドスローガンにウェルビーイングを取り入れた損害保険ジャパンの挑戦について、同社取締役常務執行役員の中嶋陽二氏に聞いた。
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マイナスをゼロにするだけだった、従来の保険
藤田康人氏(以下、敬称略) 人々の人生に欠かせない「幸せ」。保険は、さまざまなリスクが想定される生活の中で、幸せを維持するための欠かせないツールだと思いますが、損害保険ジャパン(以下「損保ジャパン」)はブランドスローガンに“Innovation for Wellbeing“を掲げていますね。
中嶋陽二氏(以下、敬称略) ウェルビーイングという言葉は、私たちのビジョンやミッションを包括するものです。保険は、事故やトラブルがあったときに初めて登場し、金銭的な補償を行うもの。機能としては、マイナスをゼロにできますが、ウェルビーイングとはそもそも遠いところにありました。
わが社の将来を考えると、近年の人口減少や自動車普及率の低下もあり、自動車保険中心の事業を見直す機会でもありました。保険が提供してきた「安心」を拡張し、お客さまの安全や健康まで提供していくという視点が必要だと感じたんです。
藤田 事業の舵を切り直す必要があったんですね。