藤田 お話をお伺いしていると、ウェルビーイングの解像度を上げて、新しい保険市場を開拓しているように思います。

中嶋 その通りです。先ほどの「メディカルマスター・プラス」は、医療保険と財物・賠償補償をパッケージにしたイメージです。2つの保険を組み合わせたものですが、これに加入していれば建物や機械設備はもちろん、経営資源としての人も大切だとする会社であるというイメージを、従業員やリクルートでアピールできます。こういったメッセージ性の高い商品へのチャレンジは、今後も土俵になっていくと思います。

時代の変化の中で、社員にもそれぞれのパーパスを問いたい

藤田 “Innovation for Wellbeing“の下では、保険商品に限らない事業展開も可能だと思いますがいかがでしょうか?

中嶋 おっしゃる通りで、お客さまのウェルビーイングにつながる保険を超えた事業領域にもチャレンジしています。個人間カーシェアリングができる「Anyca」や、駐車場シェアリング事業である「akkipa」などは好例ですね。

 また、これからの自動運転時代を見据えて、安心・安全な自動運転の実装を目指して、インシュアテックソリューション「Level Ⅳ Discovery」を、ティアフォーおよびアイサンテクノロジーと共同で開発しています。既に全国100カ所以上での自動走行実験に参画し、自動運転のリスク評価とともに、自治体などに地域の交通状況に合わせた自動運転の社会実装に向けたサポートを提供しています。

 単に保険を提供するというだけでなく、事故の起こらない自動運転の実装、走行中の見守り、万一の場合の補償、トラブル時のサポートなど、自動運転社会を一貫して支えていきたいと考えています。

藤田 現在までの事業で培ったナレッジや、手法の転換が非常にうまく作用しているように思います。どの事業でも、ウェルビーイングを追求すると、多種多様な個人の幸せの実現、いわゆるパーソナライズも意識するのでは?

中嶋 保険業界でパーソナライズを考えると、それぞれのお客さまのリスクをビッグデータを使って測っていくということになります。保険料は、リスク量から設定することになるので、リスクの高い人が保険に入れないということになりかねません。保険は、同様のリスクを持つ方たちを集団化し、相互補完するビジネスなので、パーソナライズをすると万人のウェルビーイングは築けません。

藤田 皆でリスクの共有をする。大事な視点ですね。“Innovation for Wellbeing“をブランドスローガンにする上で、従業員の方々はウェルビーイングをどのようなものと捉えていますか?