コロナ禍以降、企業の働き方改革は一層のスピード感が求められている。約7万5000人の社員を抱えるSOMPOホールディングスも例外ではなく、これまでさまざまな施策を講じてきた。同社の働き方改革の根幹にある考え方は「MYパーパス」の追求。自己の目的達成のために自律的に動くことが、ひいては同社のパーパスである「安心・安全・健康のテーマパーク」を実現することにつながっていく。グループCHRO執行役常務を務める原伸一氏が、同社の働き方改革の取り組みについて語ってもらった。

※本コンテンツは、2022年3月10日に開催されたJBpress/JDIR主催「第9回ワークスタイル改革フォーラム」の特別講演3「SOMPOの働き方改革」の内容を採録したものです。

創業の志を受け継いで「安心・安全・健康」を届ける

 SOMPOホールディングス(以下、SOMPO)の起源は、明治20年(1887年)までさかのぼる。日本初の火災保険会社として創業された「東京火災」がそのスタートだ。当時の東京はほとんどが木造建築であり、しかも密集して建てられていたことから、ひとたび火事が起きると被害は甚大なものになる。最も大きな社会問題ともいえる火災への対応策として、東京火災の創業は必然のことだった。

 東京火災の取り組みは保険業だけにとどまらず、契約者を24時間365日体制で火災から守るために「東京火災消防組」を結成。これは、当時警視庁から正式に認可された唯一の私設消防団である。火災が起こればとび口マークの法被をまとい、即座に現場に赴いて消火に当たった。身をていしてでも契約者を守り抜くその使命感は、世の中に「安心・安全・健康」を届けるという志を掲げるSOMPOの原点にもなっている。

 東京火災の創業から1世紀以上がたち、そのDNAを色濃く受け継いだ同社は、今やグループ全体で売上高3兆円超、約7万5000人の社員を抱える一大企業に成長した。祖業である国内損害保険事業を中心に、海外保険事業、国内生命保険事業、介護・シニア事業と事業範囲を拡大。2021年4月には新たにデジタル事業とヘルスケア事業にも参入し、合計6つの事業を営んでいる。原伸一氏は、現在の同社を取り巻く環境について次のように語る。

「当社は創業以来、変化する社会課題へ解を提供することで成長を続けてきました。現在も、気候変動や新たなリスクの出現、少子高齢化がもたらすさまざまな課題などと向き合う日々です。先の読めない時代に突入し、われわれは改めて経営の根幹に立ち返って、自社の価値や存在意義を考え抜いてきました。その結果たどり着いたのが、『安心・安全・健康のテーマパーク』というパーパスです」

自分自身と向き合いMYパーパスを自覚する

「安心・安全・健康のテーマパーク」とは、具体的にどのようなことを指すのか。それは「あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことができる社会の実現」であると原氏は言う。創業時の火事という社会問題に対しては火災保険を提供した。昭和30年代のモータリゼーションによる交通事故の激増には、自動車保険で対応した。このように、時代の変化に伴って現れるリスクに対し有効な解を提供して、社会に貢献していくこと。これがSOMPOの創業以来の精神であり、現在も事業推進の根幹となっている。

 では、このパーパスを実現させるためにはどのような取り組みが必要か。原氏は「社員一人一人がパーパスを『自分ごと化』させる必要がある」と語る。そのために同社では、社員の働きがいとパーパスを融合させる働き方改革を実行中だ。

 従来、会社と社員の関係性は「会社があってこその自分の人生」という考え方が一般的だった。会社に自分の人生を合わせていくことが暗黙的に求められてきたが、これからの時代はそうではない。自分の人生を最重要に考え、そこに会社という1つの要素がある。「会社の存在は『たかが』と言えるくらいのもの。人生の目的を達成するために、会社という場を多いに利用してほしい」と原氏。このように意識のパラダイムシフトを図ることが、パーパスを自分ごと化させるためのスタート地点となる。

 そして、意識改革を図ることができたら、次に必要となるのが「MYパーパス」の追求だ。MYパーパスとは人生において自らを突き動かすもの、自分はどうありたいのかという思いや人生における使命のことである。同社の社員はMYパーパスを自覚するために、「WANT(内発的動機)」「MUST(社会的責務)」「CAN(保有能力)」という3つの観点から自分自身と向き合うことが求められている。

「WANT」とは最もワクワクした瞬間、「MUST」とは解決すべき社会課題、そして「CAN」とは、これまでの経験を経て身につけた能力(運命が与えた能力)のことである。これら3つが重なり合ったものがMYパーパスであり、それは自分の人生で成し遂げたいことと重なっていく。

「一人一人がMYパーパスを定義し、実現に向けて働くことで、自律・自走の状態が生まれます。そして、MYパーパスをSOMPOのパーパスと重ね合わせることができれば、SOMPOのパーパスが自分ごと化されていくはずです」