中嶋 実は、その“万が一のとき”というのが、争点にもなったんです。保険は、万が一に備えて、年1回の契約更新を基本とするサイクルです。すると、お客さまとの接点は事故時か契約更新のタイミングのみ。我々のビジネスはどこか受け身なんです。そこからお客さまをいかにリードしていくかが課題の1つでした。
藤田 事故時にサービスの幅が広がったり、トラブルがない通常時にも安心を提供してくれる。契約者から見ると、保険にそういった視点が付加されるのは大きいはずです。
中嶋 お客さまと接する時間を増やすためには、保険の機能拡張は必須です。今までは接点がなかったオフの時間までお客さまと関係性ができると、“万が一のとき”は損保ジャパンを選んでいただけますし、それ以外の派生ビジネスもご利用いただける可能性が高まります。
藤田 なるほど。1つの保険商品しか買っていただけなかった時代と比べ、それ以外のサービスにも顧客がついてくる。ビジネスに広がりが生まれるわけですね。
中嶋 また、保険は約款が商品でもあります。紙と鉛筆さえあればできてしまう。極論すると、どんなに斬新な商品を打ち出したとしても、1週間後には類似品を他社が売り出すこともできるわけです。だからこそ、社会課題にアプローチするようなサービスを積極的に展開していきたかった。それがゆくゆくは、定量的な価値の提供につながると思いますから。
藤田 中小企業に向けた、従業員の満足度を上げる保険商品もあるそうですね。
中嶋 「メディカルマスター・プラス」のことですね。当該商品は、中小企業の財物や第三者への賠償といった従来の補償に加え、中小企業の従業員の病気まで1つの保険でカバーしているのが強みです。加入時に従業員の健康状態を告知する必要がないという手軽さは、力強いメリットではないでしょうか。同時に、働き手のエンゲージメントが高まるという健康経営的な視点も持ち合わせています。
そのほかにも、ドライブレコーダーを活用した運転支援サービス「Driving!」では、運転中に車体が衝撃を受けると自動的に損保ジャパンやご家族、保険代理店に通知され、速やかな事故解決が可能です。また、衝突や逆走の警告機能を搭載した運転サポートや、運転の癖を分析しスマートフォンアプリで確認できる機能もあり、運転のスコアが高いと翌年の保険料が割引になります。これらはすべて、本業の保険事業から派生した商品ですね。