中嶋 現状では、ウェルビーイングは皆が理解し得るものではなく、明確な定義も定めていません。でも、それでもいいんじゃないかとも思うんです。社内では、従業員それぞれにマイパーパスを考えてもらっています。今までは「会社の中に自分の人生を置く」という考え方の社員が多かったと思いますが、人生は仕事だけではありません。「自分の人生の中に会社を置く」という価値観へのシフトを促しています。

 人生のパーパス、何に喜びを感じるのか? 何が自分を突き動かすのか? 一人ひとりに幸せについて考えてもらうことが、損保ジャパンの将来の糧になると信じています。

対談を終えて(藤田)

 ふだんから数多くの企業の経営層と話す機会がありますが、ウェルビーイング領域へ進出する企業は増加の一途です。しかし、ウェルビーイングは杓子定規な概念ではなく、各事業分野、環境、サービスの提供先にいる消費者によって形はさまざまです。

 そんな中、各事業の責任者の方々に、ウェルビーイングの解像度を上げていくためのアプローチをお聞きすることが多くなりました。ここでいう“解像度”とは、事業によって異なるウェルビーイングの定義(の輪郭)を指します。

 ブランドスローガンにウェルビーイングを掲げて以降、損保ジャパンは、本職である保険の切り口を変え、より個人のウェルビーイングの実現を目指した「機能拡張型保険」と、蓄積した損害リスクのビッグデータを活用した、保険とは全く異なる分野の新しいサービスを展開してきました。これらのサービスのほとんどが、ウェルビーイング元年ともいえる“2021年”に始動したことは、市場の新たなる成長を感じさせます。

「万が一に備えよう」ではなく、“人生のウェルビーイングを実現するためにお手伝いさせてほしい”。中嶋さんが語ったこの視点が、損保ジャパンが目指すウェルビーイングの輪郭を確かなものにさせているだと実感しています。