井手 そうかもしれません。私たちとしてはウェルビーイングを意識してきたわけではないんですが、ここ数年の間に私たちの考え方が、ウェルビーイングという言葉によく合っているのだと気づきました。2年ほど前から社内でも「ウェルビーイング」という言葉を使うようになりました。

ショッピングはエンタメだと教えてくれた出来事

藤田 ヤッホーのクラフトビールは、どのような経緯で現在のようなマーケティングにたどり着いたのでしょうか? 一般的な話をすると、メーカーとしては1つのビッグブランドをつくってしまったほうが結果を出しやすいという場合もあります。

 ヤッホーの製品は一つひとつ味わいに個性があって、パッケージデザインも際立っていますが、それらの設計がどのように消費者の満足や幸せにつながっていったんでしょう?

井手 製品のネーミングやデザインは、大手メーカーの製品の差別化のために必要ではありましたが、それだけでは今のような形にはなっていなかったと思います。ヤッホーの歴史を紐解くと、創業当初、地ビールの大流行がありました。「よなよなエール」も地ビール枠で認知され好調だったんですが、ブームが終わるとパタリと売れなくなったんです。

 暗黒の時代の中、ネットショップに本格的に注力し始めたところから転機が見えてきました。ショッピングはエンターテインメントだと教えてくれた出来事があったんです。お客様が喜んでくれたらという一心で、商品ページによなよなエールを擬人化させた寸劇ストーリーを載せてみた時です。くだらないと言われると思っていたら、予想以上に好評いただき、さらに売上も増加したんです。そこからクラフトビールを中心に、それらを味わう楽しさを伝えながら、会社としてどう昇華できるかを常に考えるようになりました。ツールは、主にメルマガやブログの時代でしたが、自分たちらしさをコンテンツとして発信していくと、そこにファンがついてくれたんです。