入国制限撤廃で急増した訪日外国人観光客(写真:ロイター/アフロ)

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

半分になった経常黒字

 2022年のドル/円相場は激動の年であったが、10月までの急騰、11月以降の急落を経て12月にようやく小康を得ている。もっぱら、日米金利差の拡大・縮小に応じて現状や展望を議論する機運が支配的だが、円相場の底流にある需給環境の変化から目を逸らしてはならない。長い目で見た方向感はやはり需給が規定するはずだ。

 12月8日に発表された10月国際収支統計では、経常収支が▲641億円と今年1月以来、2度目の赤字を記録した。10月に赤字となるのは比較可能な1985年以降で2013年(▲162億円)以来、2度目である。

 年初来(1~10月)合計の経常黒字は9兆6960億円だが、同期(1~10月合計)の経常収支に関してパンデミック直前の3年平均(2017~2019年)を取ると18兆7480億円だった。

 あくまで現時点のスナップショットの話だが、パンデミックや戦争などを通じて、日本の経常黒字水準が半分になったイメージになる(図表①)。

【図表①】


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 ちなみに、より直近のデータまで確認できる貿易統計は11月分まで明らかになっており、貿易赤字は1~11月合計で約▲18.5兆円である。2022年通年では▲20兆円の大台もあり得る。これは現時点では過去最大の貿易赤字だった2014年(▲12.8兆円)の1.5倍に相当する規模だ。