円高になったとしても、根本的にバーゲンセール状態の安い日本(提供:PantherMedia/イメージマート)

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

一般家庭がこれから味わう円安の痛撃

 史上最大の円安相場に資源高も重なった2022年は、日用品から光熱費や輸送費など、あらゆる財とサービスの価格が引き上げられた。

 原油を筆頭とする資源価格は年央に、円安・ドル高は10月末にピークアウトしているが、経済活動は既存契約に引っ張られる部分もあるため、それが日常生活に即時反映されるわけではない。年初来で見られてきた相場変動の影響はこれから顕現化することになる。

 円安の影響が足許で顕現化しているという様子は、図表①を見ればよく分かる。輸入物価指数に関して、契約通貨建て(つまり外貨建て)ベースでは年央にはピークアウトしているが、円建てベースでは高止まりしている。

【図表①】


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 金融市場(プロ)の世界では資源高も円安・ドル高もピークアウトしたという説が流布されているものの、家計部門(アマチュア)の世界の実感は違う。

 恐らく家計部門の実感と、これから起きる米利上げペースの減速(ないし停止)に伴って進むであろう円高・ドル安傾向はあまり一致しないはずである。円安の手痛い影響はこれから体感されるものだ。

 こうした齟齬は、物価の変動を加味しない名目ベースと物価の変動を加味した実質ベースの議論に分けて考えると状況把握が進みやすいかもしれない。今回の本欄ではこの点を解説してみたい。