そもそも「刑法等の実定法規の定める禁止規範または命令規範に違反」と首相が言及したのは、かつて解散命令が出されたオウム真理教に対する東京高裁の決定の解釈だった。これを「踏襲している」とした。文化庁が用意した答弁だったようだ。

ケースバイケースの判断でいいのか

 報道によると、18日の衆議院予算委員会が終了して、官邸に戻った岸田首相は、「民法の不法行為を含めることができるのか検討してほしい」と関係省庁に指示。法務省などから詳しい専門家が招集され、夜中まで議論が行われたとされる。それで翌日の答弁修正となった。

 しかも、民法の不法行為には、指揮・監督する立場の人物の責任を問う「使用者責任」も対象に含まれるとの考えもあわせて示している。

 これでかつての事例――といってもオウム真理教と明覚寺の2例しかないが――にとらわれることなく、「個別事案」として「ケースバイケース」で判断できるとする政府見解がまとまったことになる。

 これまでに統一教会の組織的な不法行為を認める民事判決はあっても、刑事判決はない。18日の衆議院予算委員会で岸田首相は、政府が9月に設置した関係省庁の合同相談窓口に寄せられた統一教会に関する相談が1700件余りあり、このうち警察につないだ案件もあったとしていた。松野博一官房長官は記者会見で、その数は70件程度としている。