ここまでくると、統一教会の解散命令“ありき”で、首相の国会答弁が変節しているとしか思えない。そこで生じるもうひとつの弊害。

 首相が答弁を修正したように、民法の不法行為の組織性が認められて、そこに悪質性がなかったとは言い難いし、継続性についてはいまも被害相談が相次ぐ。警察につないだ相談もあったとすれば、刑事事件としての立件も視野に入ってくる。

 とすれば、なにも「質問権」の行使まで必要なく、現時点で解散命令請求の検討に入れるはずだ。そもそも解散命令を前提に教団に対して「法令に反することをしていますか」と質問したところで、「はい、そうです」と回答するはずがない。まして、統一教会はこのところの会見をみても、反論と称した攻撃性が浮きだってきている団体だ。

これでもしも解散命令が出せなければ政権の致命傷に

 ここへ来て首相が急激に方針を転換したり、国会答弁を修正したりすることによって、次第に解散命令請求に向けた制約がゆるくなっていっている。ここまで流れをつくっておいて、解散命令に至らなければ、世論も黙ってはいない。支持率低下に拍車がかかり、政権維持にも支障を来す。世論を見据えた日和見的なところが自分の首を絞める。もうあとには退けない。

 しかも、岸田首相は統一教会の被害者救済について、今国会中に関連法案の提出を目指すことを表明している。自民党、立憲民主党、日本維新の会、それに公明党の4党は、統一教会の被害者救済を図るための協議会の初会合を21日に開いた。だが、その被害者を出している団体に法人格を認め、税制上の優遇を与えたままに野放しにしておく。こんなに理に適わないこともない。流れ出る血は傷口を塞がなければ止まらない。感染症対策には病原菌やウイルスの殺菌消毒が一番だ。解散命令の請求は急いだほうがいい。

 ただ、それも首相がまたいつ思い付いたように解散命令の請求を指示するとも限らない。それが国民の多くが求めるところだとしても、あまりにも言質の変節に節操がなさ過ぎる。