佐藤優氏(撮影:乾晋也)

長年にわたってジャーナリズムの最前線で活躍してきた田原総一朗氏と、元外務省主任分析官にして現在はインテリジェンスに精通する作家として健筆をふるう佐藤優氏。世の中の裏側まで見つめ続けてきた2人が、「人間が生きる意味」をテーマに共著を上梓した。タイトルは『人生は天国が、それとも地獄か』(白秋社)。人生の後半戦の真っ只中にいる2人による、「60歳からの人生」をよりよく生きるためのアドアイスがふんだんに盛り込まれた内容に仕上がっている。その2人による特別対談をお届けする。

人生の設計図を描き直す

田原 現代は、「人生100年」と言われるようになりました。今年の9月15日、厚労省が発表した全国の100歳以上の高齢者は、過去最多の9万526人。実際に、100歳を超えて生きることはそんなに珍しくなくなっている。

 するとね、佐藤さん、これまで多くの日本人は、「20年学んで40年働き、残りの15年を年金で暮らす」という人生設計が通用しなくなりますね。雇用延長と言っても65歳、70歳くらい。さらに20年、30年の人生があるかもしれない。寿命が延びるのはいいことなんですが、老後をどう生きるかが大問題になってる。

佐藤 いや、ほんとそれは問題ですよ。大企業を定年退職したり、再雇用になった私の友人や知人たちを見ていると、みんな同じ傾向にある。だいたい最初の3カ月は元気なんです。でも3カ月目あたりから、急に元気がなくなる。「どうして?」と聞くと、「貯金が目減りしていく」というんです。この後、「切り崩すだけの人生か」と思ってしまうんですね。

 経済的なことばかりじゃありません。継続雇用で前と同じように会社で仕事はしていても、かつての部下が相談に来なくなる。自分から挨拶をすることはあっても、相手からはしてくれない気がする……。

 退職した人たちは、家にいれば、奥さんがいかにもジャマそうな顔をする。家庭は一つの生態系ですからね、しかたないんです。長年朝8時くらいから夜までいなかった人が、ある時からいるようになればそれは「異物」です。奥さんの免疫反応のようなものが反応するんですよ。

田原総一朗氏(左)と佐藤優氏(撮影:乾晋也)

 すると夫は、家にいたくないから、お金もかからず、ずっといられる図書館に行く。平日昼間の図書館は、そんな高齢者であふれてますよ。そこで何が起こるかというと、朝一番で日経新聞を読むために、順番争いが起きるんです。

田原 そうなの⁉ 日経新聞、家でとればいいじゃない。

佐藤 会社員を辞めたのに購読料払うのは、もったいないじゃないですか。