(舛添 要一:国際政治学者)
ロシアはウクライナ4州を併合し、ロシアと一体の領土としようとしている。しかし、軍事的には各地の要衝をウクライナ軍に奪還されるなど、劣勢に立たされている。ウクライナ戦争は大きな転換点を迎えている。
4州併合とロシア軍の劣勢
ロシアは、ドネツク、ルハンスクの東部2州、ヘルソン、ザポリージャの南部2州を併合し、国会で採択された関連法案にもプーチン大統領が署名して、10月5日には統合の手続きが完了した。その結果、ロシアは、通貨、税制、経済システム、司法などの諸制度をロシア化する作業を加速化させることになる。また、ザポリージャ原子力発電所も国有化する。
しかし、ウクライナや日米欧の先進民主主義国をはじめとする国際社会は、この併合を認めておらず、紛争は続いていくだろう。
一方、ウクライナ軍は反転攻勢を強めており、ドネツク州北部の鉄道の要衝リマンを奪還したり、ヘルソン州で複数の集落を解放したりしている。
アメリカは、ウクライナがロシアに奪われた領土を回復するまで支援を続けることを明言しており、4日、新たに6億2500万ドル(約900億円)の追加軍事支援を行うことを表明した。2月のロシア軍による侵攻以来、アメリカのウクライナへの軍事支援の総額は168億ドル(約2兆4300億円)に上っている。
ロシア軍は各地で劣勢に立たされており、それが予備役30万人の召集の背景にある。しかし、予備役対象者のデータが不備であり、召集に際しては多くの混乱が生じている。