(舛添 要一:国際政治学者)
プーチン大統領が戦況の立て直しに躍起になっている。9月21日に30万人の予備役召集を命令。また、23〜27日にウクライナ南東部4州で住民投票を実施、30日には4州の併合条約に調印した。そこに至るまでに積み重なったプーチンの誤算については、前回の本コラムで解説した(参考:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71964)。
このプーチンの決断によって、ウクライナ戦争の様相が大きく変化する可能性があるので、今回もまた、ウクライナの現状について分析し、今後の展開を予想したい。
住民投票の法的効力
東部のドネツク州、ルハンスク州、南部のヘルソン州、ザポリージャ州では、ロシア編入の是非を問う住民投票が行われ、その結果が28日に公表された。
投票率は、ドネツク州が97.5%、ルハンスク州が94.2%、ヘルソン州が78.9%、ザポリージャ州が85.4%であり、賛成票は、それぞれ99.2%、98.4%、87.1%、93.1%であった。
住民投票が住民の完全に自由な意思で行われたとは言いがたく、結果が公正であるとは到底言えない。賛成多数で承認されることは、あらかじめ決められていたことである。
問題は、住民投票の合法性である。ウクライナ憲法は73条で「領土変更は国民投票によってのみ議決することができる」と規定している。2014年にはクリミアで住民投票が行われたが、これはウクライナ憲法上は無効である。
そこで、ロシアは、まずクリミアに独立宣言させ、その上で、ロシアと「独立国」クリミアと間の取り決めとして併合を実行したのである。
ウクライナ東部のルハンスク州とドネツク州は、ロシアが、侵攻直前の2月21日に、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国という独立国として承認しているので、クリミアの場合と同じ手続きで併合できる。
一方、南部のヘルソン州とザポリージャ州については、ロシアは独立国家として承認していなかった。そこで、29日になり、プーチン大統領は両地域を独立領とする法令に署名。これで併合に向けての準備を整えた。