ウクライナとロシアは、特に「穀物」において世界の食料を支えてきた。ゆえに「ウクライナ戦争」は「食糧危機」を引き起こす。日本でも食料品の値上がりが続くが、中東やアフリカ諸国にまで目を配れば、その被害は甚大になる。
果たして「穀倉地帯・ウクライナ」はどうなっているのか。戦場カメラマンの渡部陽一氏が配信するコンテンツ『渡部陽一 1000枚の「戦場」』〈シンクロナス〉で語っている。
その一部をテキストで紹介する。
(構成/林貴代子)
穀倉地帯・ウクライナの今
戦場カメラマンの渡部陽一です。
2022年2月24日、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって以来、5、6、7、9月と4度、ウクライナへ行き、写真を撮ってきました。
今回はそのなかで見えた「穀倉地帯・ウクライナ」という切り口でお伝えしていきたいと思います。
ウクライナと、ヒマワリ畑
青空と、広大な黄色い大地。まさにウクライナの国旗です。この黄色の大地は、ヒマワリ畑。8月の今、地平線につながるほどのヒマワリ畑が広がっています。
1970年に公開された有名なイタリア映画『ひまわり』。ウクライナ侵攻後、日本各地でもリバイバル上映が行われていますが、そのロケ地にもなった有名な場所です。
このヒマワリは「ヒマワリ油」に加工されます。ウクライナの一大産業であり、大切な輸出品目のひとつです。
また穀倉地帯であるウクライナは、小麦やサトウキビをはじめとしたさまざまな農作物を産出し、ウクライナの輸出産業を支えています。
ロシアの軍事侵攻以降、世界情勢を大きく揺さぶってきたキーワードのひとつに「WFP(World Food Program/国連世界食糧計画)」があります。
世界の食糧管理を行っている国連WFPの活動のなかで、もともとウクライナ産の穀物や食料は、その南部に面する黒海を通じて中東やアフリカ方面にタンカーで輸送されていた。
ところが、その黒海をロシア軍が制圧したことで、ウクライナはヒマワリ油、小麦、サトウキビなどを輸出することができなくなっています。これはウクライナに対する揺さぶりだけでなく、同国の穀物に支えられてきた国々の「食糧危機」でもあるんです。