侵攻開始以来、3度にわたりウクライナ取材を敢行した戦場カメラマン・渡部陽一氏が、「1000枚の戦場」(渡辺陽一氏が撮り続けた「戦場」の写真から、戦場のリアルを伝える動画コンテンツ)の中で、ウクライナの「今」を、撮影してきた写真とともにレポートしている。
前編ではその中から、開戦時にロシア側から宣言されていた攻撃対象以上の破壊の現場を紹介した。
前編「渡部陽一、ウクライナ「人道回廊」で撮った衝撃の写真」
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71204)
今回は、ニュースなどでは伝えられることの少ない、「戦場以外」のウクライナの姿を紹介する。
日本では報道されていない、ウクライナのもうひとつの日常
10日間の滞在期間で渡部が回ったエリアは、首都キーウをはじめ、ロシア軍による虐殺が行われたというイルピン、ブチャ、ホストメルなど。
悲しい戦地の写真をカメラに収めてきた。
その中で渡部は、「2022年2月の侵攻以前から何度も足を運んだ」というウクライナについて「もうひとつ大切なことを伝えたい」と、彼・彼女たちの日常にファインダーを向けている。
「大切なこととは、ウクライナのどこもかしこもが廃墟となり、ウクライナという国家が崩壊してしまった、灰のようになってしまった、とういうことではないということです」
ニュースでは主に戦地の悲惨さや避難する人々の姿が報道されがちだ。
しかし「戦場」を取り続けて、渡部がいつも感じることは、「そこだけ」に目を向け、「それがその国、あるいは地域のすべてだ」と考えてはいけない、という思いだ。
「ウクライナは、ものすごく大きな国。戦地となっているのはその一部の地域です。
東部、南部、首都キーウ近郊では今も爆撃がありますが、日常が戻りつつあると感じる場所も、(5月の撮影時点では)ありました」(渡部陽一氏)
冒頭に示した写真は、今年5月に渡部が撮影した、キーウからポーランドに抜ける国際特急列車の様子だ。