ウクライナ戦争を早期に終結させるためにNATO(北大西洋条約機構)が参戦するしかない。
欧米などからの軍事支援はあるものの軍事作戦的に孤立・無援のウクライナに対して、民間人や民間住宅を情け容赦なく砲撃し、病院や学校、民間インフラを手加減せずに無差別爆撃し、市民を大量虐殺――。
こうした戦争犯罪を繰り広げるロシアの侵略戦争を早く終わらせたいと思うのは筆者だけでないと思う。
国際法を無視し、核兵器を掲げてNATO加盟国を牽制するなど、国連安保理の常任理事国とは思えない。
さて、国際司法裁判所(IJC)は3月16日、ロシアは2022年2月24日にウクライナの領域内で開始した軍事作戦を直ちに停止し、軍隊や非正規部隊などが軍事作戦をさらに進める行動をしないことを確保しなければならないといった暫定措置命令を発出した。
また、国連の第11会期の緊急特別総会(ESS:Emergency Special Session)は、10月12日、第4回目の決議を採択した。
同決議は、ウクライナ東・南部4州でのロシアのいわゆる「住民投票」とそれに続く併合の試みは国際法の下で無効かつ違法であると宣言し、これらの領土がロシアの一部であることを認めないことをすべての国に要求した。
また、ロシアがウクライナの領土保全と主権を侵害しているため、ロシアがウクライナから即時、完全かつ無条件に撤退することを要求している。
以上のように、国際社会は、プーチンに対して戦争の早期終了を強く要求している。しかし、プーチンに戦争をやめる様子は見られない。
そこで筆者は、NATOは民主主義国であり国連加盟国のウクライナの主権と領土の保全を守るために、集団的自衛権を法的根拠として、ウクライナ戦争に参戦すべき時が来たと考えている。
本来は、正当な理由のない武力行使による紛争とそこでの非人道的行為を阻止する責任は、国連安全保障理事会(以下、安保理)が有している。
しかし、今回のウクライナ戦争は、拒否権を持つ常任理事国のロシアによる軍事侵攻であるため国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する安保理は機能不全の状態にあり、国連軍を編成・派遣することができない。
とはいえ、安全保障理事会はその権威の下における強制行動のために、適当な場合には、地域的取極又は地域的機関を利用する(第53条)とある。NATOはここで言う地域的機関に該当する。
また、NATOは兵力面でロシアを圧倒している。
NATO加盟国の兵力は欧州加盟国だけで約185万人、米国とカナダを加えると約326万人にも達するのに対し、ロシアの総兵力は 90万人程度にしかならず、欧州正面に割ける兵力はこれよりもさらに少なくなる。
NATOは兵力面だけでなく、主要戦車や作戦航空機などの主力装備面でもロシアを凌駕している。核戦力についてもNATOには米・英・仏3カ国の核保有国がいるがロシアにつく核保有国はいないであろう。
仮に、米・ロの核戦力がパリティであるとすれば、英・仏の核戦力が大きな意味を持つことになる。
さらに大事なことは、NATO加盟国はロシアの脅威に直面して、かつてないほど結束していることである。
筆者は、NATOはいつでもウクライナ戦争に参戦する準備ができていると見ている。
とは言っても、全会一致を原則とする北大西洋理事会(NAC)で、全加盟国の合意を得ることは難しいと思われる。
その時は、米国をはじめとする主要国は有志連合(軍)を編成・参戦するかもしれない。
以下、初めに国際司法裁判所(ICJ)の判決について述べ、次に緊急特別総会の役割について述べ、次にNATOのウクライナ戦争への参戦について述べ、最後にロシアが核を使用する可能性について述べる。