8月にウクライナがクリミア半島のロシア空軍基地を爆撃した時には、米国防総省はこの攻撃に米国の兵器が一切使われていないことに言及した。

 ロシアが今、ウクライナの占領地域すべてをクリミアと同じ位置づけにしたことから、そのような和平協定はなお一層考えにくくなった。

「これまではクリミアは別物だった」

 シンクタンクの欧州外交評議会(ECFR)に籍を置くグスタフ・グレッセル氏はそう語る。

「たとえウクライナ人が決して公にはそう言わないとしても、西側とロシアの認識には違いがあること、クリミアを奪回せずに戦争を終結させなければならないかもしれないことを認識していた」

 グレッセル氏いわく、併合が「そうした考えを葬り去った」。

国際法ではすべてが違法だが・・・

 国際法によれば、ロシアが行った併合はすべて等しく違法だ。

 国際司法裁判所(ICJ)における領土紛争で当事国が主張する最も重要な弁明は、既存の条約、その領地の実効支配、「専有物保留の原則」(当該領土が独立を果たした時には、紛争以前の施政上の境界線を国境とする原則)のいずれかにかかわるものだ。

 国際的に認められているウクライナとロシアの国境は、両国がソビエト連邦の構成国だった時期、すなわち1991年のソ連崩壊前に両国間に存在していた境界にならったものだ。

 両国は1997年締結の友好協力条約でこの境界を尊重することを約束し、2003年に明確な国境条約を批准していた。

 ロシアはクリミア半島とウクライナ東部の領地奪取を、1999年のNATOによるコソボ介入の前例と、2008年のコソボ共和国の独立宣言をもって正当化した。

 だが、ICJがコソボの独立宣言を合法と判断した際には、軍隊の脅しのない自由な選挙で選ばれた議会によってなされたものであることが理由の一つに挙げられていた。

(なお、EU加盟国5カ国を含む多くの国がコソボ共和国をまだ承認していない)

 片やクリミアでは、いわゆる独立に関する住民投票が、占領軍が銃を担いでいるなかで行われた。その後、クリミア議会で行われたロシア編入申請の議決も同様だ。

 今年9月のインチキ住民投票では、これまでよりもさらにあからさまに不正が行われた。

 ドネツクでロシア編入に賛成する票が99%に達したことは、ロシア当局が投票結果をただでっち上げたことを明らかにした。