(英エコノミスト誌 2022年9月24日号)

ゲームの世界ではすでに広告が重要な収益の柱として育ちつつある

合計で3000億ドルの広告ビジネスを誇る2社が、景気の悪化と強力な新ライバルに直面している。

 この10年間、デジタル広告については2つの真理があまねく認められてきた。

 一つは、急成長を遂げる業界は景気循環の影響をほとんど受けないというもの。

 もう一つは、デジタル広告市場はグーグル(検索広告)とメタ(ソーシャルメディア)の2社が牛耳る「複占」だというもので、嫉妬したあるライバルはこの状況を、ジョン・ロックフェラーによる19世紀後半の石油支配になぞらえた。

 この2つの真理が今、同時に苦難に直面している。

 中国経済が減速し、西側諸国が景気後退に向かっていることを受け、世界中の企業がマーケティング予算を削っている。

 つい最近まで、この分野の予算削減と言えばその対象は非デジタル広告だった。デジタル広告への支出は維持され、増額されることすらあった。

 ところが広告の大半がオンラインになった今では、この戦略も行き詰まりつつある。

 メタは第2四半期(2022年4~6月期)、同社史上初の前年比減収を記録した。

 写真・動画共有アプリ「スナップチャット」で知られるライバルのスナップは、従業員の2割をレイオフしている。

デジタル広告業界に大きな異変

 メタにとって、そしてグーグルの親会社であるアルファベットにとっても、景気循環の問題はまだ最悪ではないかもしれない。

 かつてはデジタル広告市場の成長が鈍化したら、市場シェア拡大で補うことを期待できたかもしれない。しかし、そんな考えはもう通用しない。

 両社は今年、広告事業で計3000億ドル前後の売上高を計上すると予想されるが、西側における両社の4大ライバルの売上高合計はそのほぼ4分の1に達する。

 大きな金額には聞こえないかもしれないが、たとえそうだとしても、メタとグーグルにとっては気がかりなデータとなる。

 これらのライバルの大半は、5年前の広告市場ではほとんど無に等しい存在だった(図参照)。