Pさんは地元に本社がある建設資材を製造する上場企業で25年勤めている。ところが、15年ほど前から資材不足やリーマンショックの影響で残業が減り、月40万円くらいだった収入が20~30万円くらいまで落ち込んだ。

「最も苦しかったのが50歳くらいの頃。当時は住宅ローン、マイカーローン、国の教育ローン、それらの返済のためにやむを得ず借りたカードローンの4つの返済に追われていました。返済額の合計が月13万円くらいのこともあって」

 Pさんは夜や土日に食品工場や飲食店、ガソリンスタンドなどさまざまな副業バイトで月に5~6万円の副収入を得て、返済に充ててきた。

人に言えないバイトをあえてする理由

 そんなPさんも、現在は3つのローンが終了した。今も返済しているのは、国の教育ローンの月3万円のみだ。子どもたちも独立した。

 今も副業をしなければ生活に余裕はないが、副業を楽しむ余裕は生まれたという。

「副業は本業ではできないような仕事ができる点がいい。どうせやるなら面白い副業をやりたいなと。ほかの人が知らない世界が見てみたい」

 そうして現在やっている副業が、時給1000円のラブホ清掃というわけだ。

 実は、これまでインタビューした副業をする中高年男性の中にも、こうした動機の人はけっこういた。彼らは、デリヘルの送迎やキャバクラのキッチンのような「夜の副業」をあえて選ぶ。サラリーマン生活では味わえない非日常を楽しんでいるのだ。

 Pさんは、本業が終わった18~19時以降に、職場からの帰り道にあるラブホテルに、週に3~4日ほど出勤する。