怪しく光るダブルベッドに怯える
「おつかれさまーっす!!」
部屋に入った途端に、塩素系漂白剤の匂いが鼻をついた。カビキラーの泡にまみれた浴室で、40代くらいの女性がブラシで床をガシガシ磨きながら挨拶する。黒髪を一本に束ね、ズボンをモモまでたくし上げ、便所座りで手を動かす姿はむしろ痛快だ。
奥に入ると、紫色のライトに照らされたダブルサイズのベッドがあり、さすがに一瞬ひるむ。
部屋では、20代の保育士風ぽっちゃりめ女子と、50代くらいの頭の禿げた男性がベッド周りを掃除している。このホテルでは、昼間の清掃は3人一組で行うそうだ。
都心のターミナル駅近くのホテルで働いているのは、外国籍の人が多いという。しかし、住宅街にあるこのホテルは、勤務表を見る限り日本人しかいない。20~60代のさまざまな男女が働いている。
まずはベッド周り、テーブル、テレビ台を、アルコールスプレーしながら雑巾で拭くように指示された。ベッドメイクは二人でやると作業が早い。シーツを敷き、掛布団にカバーをかける手際のよさに見とれるうちに、紫のライトにも見慣れてしまった。
「お客さんは、中高年ばっかですねー。40~50代が多いかな」
枕カバーを取り替えながら、保育士風女子が教えてくれた。都内のラブホテルもやはりそうか。ここのホテルは3時間の休憩でも、安い部屋は4900円、高い部屋は1万1000円する。女性を呼べば、さらにお金がかかるだろう。