債務免除でも中国の「身銭」は切らず

 このように中国の債務の減免は皆無ではないが*8、今回の発表が、かくも大きな注目を浴びたのは、その債務免除額が大きく、また、かかる措置が各国との事前交渉なしに、しかも、17カ国もの多くの国を対象に一斉に行われたということである。

*8 中国は今回のみならず昨年もアフリカの最貧15カ国に対し、総額1億ドル強の債務救済を行ったが、その金額は今回の発表と較べると極めて小さい。このほか、コンゴ民主共和国に対しても、2021年、0.1億ドルの債務救済を行ったが、それはコンゴ民主共和国との個別交渉を通じて行ったものであった。

 同時にここで注目しておくべきなのは、今回の債務救済措置は、中国側が身銭を一切使うことなく、行われたということである。

 というのは、債務を帳消しにした場合、当然その穴埋めをするためのお金をどこかで見つけなければならないが、中国は、このための資金として、昨年、IMFから“棚ぼた”的に手に入れたSDR(特別引出権)を使うこととしたからである。

 IMFは昨年8月、すべての加盟国を対象に、その持ち分に応じた額のSDRの特別配給を行うことを決定したが、中国のIMFへの出資比率は6.07%であったことから、これに対応する395億ドル相当の特別配分を受けており、それは外為特別会計で眠っていた訳で、今回はそれを使用するというだけのことであるので、特段の痛みは伴わない。

 ただ中国が巧みなのは、上記の債務救済の発表を、日本が、世銀、UNDP、アフリカ連合委員会の協力を得て開催する第8回アフリカ開発会議(本年8月27日、28日の両日)の直前にぶつけてきたことである。