習近平国家主席が進め、国際会議も開くほどだった一帯一路にはほころびがみられる(写真:AP/アフロ)

(市岡 繁男:相場研究家)

キワモノ教授の経済予測、実はほぼ的中

 米サザン・メソジスト大学のラビ・バトラ教授といえば、1987年に邦訳された『1990年の大恐慌』(勁草書房)で世界的な株価の暴落を予測したことで知られます。この本は少なくともバブルが崩壊した日本株については的中しました。彼の暗い予測はその後、過激さを増して、94年の著書では「西暦2010年までに資本主義が崩壊する」とまで断言したのです。さすがにこの予測は外れ、この頃からキワモノ扱いされるようになりました。

 筆者もかつてバトラ教授の著書を読んだ1人ですが、その結論に至る論拠がいま一つ理解できませんでした。当時はまだインターネットが普及しておらず、著者が挙げたデータを入手できなかったからです。

 それが今なら可能になっています。そこで99年に邦訳された彼の著書(『ラビ・バトラの大予測・世界経済』たちばな出版)をベースに検証してみたところ、ほぼ的中していることがわかりました。

 バトラ教授の主張の柱は6点あります。最初の4点は、①独占企業の台頭で企業間の競争が阻害される、②賃金の伸びが生産性の向上に劣るため、企業収益は急増、株価も急騰する、③賃金が増えないので、生産と消費の需給バランスは借入金増で維持される、④その需給ギャップが表面化すると、株価は下落し景気後退は不可避となる、といった具合に集約できます。この④は2008年のリーマン・ショックで現実のものとなりましたが、そこに至る過程となる②と③についてグラフを作成してみました(図1)。 


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本記事には多数のグラフが出てきます。配信先のサイトで表示されない場合は以下をご確認ください(https://jbpress.ismedia.jp/articles/gallery/71842

 まず、1990年第1四半期末を起点に、米国の実質ベースの労働者賃金、労働生産性、家計消費支出、企業収益、家計債務残高の推移をみます。

 この31年間で実質賃金は6.6%(年率0.2%)しか増加していません。これに対し労働生産性は81%(年率1.9%)も改善したことで、企業収益は3.7倍になりました。

 また労働者の実質賃金は横ばいなのに消費支出額は2.3倍になっています。家計債務はそのギャップを埋める形で5.3倍になりました。まさにバトラ教授が指摘した通りの事態が進行しているのです。