新型コロナウイルス感染症の影響で米国の平均寿命は一気に縮まった(写真:ロイター/アフロ)

(市岡 繁男:相場研究家)

日本の出生数は異常な低水準に

 厚生労働省が8月30日に公表した人口動態統計(速報値)によると、2022年1~6月の日本の出生数は前年同期比で5.0%も減りました。あらためて新型コロナウイルス感染症の拡大による「産み控え」を印象づけたと言えそうです。

 日本の人口統計をみると次の2点が注目されます。1点目は冒頭で触れた出生数で、2021年の年間で81万人と、1873年以来の水準に減少しました(「日本帝国人口動態統計」など各種資料による)。当時の総人口が3500万人だったことを思えば、今の出生数は異常な少なさです。2点目は死亡者数で、2021年は144万人と戦後では最大となりました。ただ、戦時中を除くピークとなった1918年には辛うじて届いていません(図1)。


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 1918年の死亡者数が149万人に急増したのは、スペイン風邪の世界的流行によるものです。その前年、日本の総人口は5400万人だったので、人口の占める死亡率は2.75%と驚異的な水準だったと言えるでしょう。

 歴史人口学研究の第一人者だった速水融氏の『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』(藤原書店)によると、当時の新聞紙面は、「罹患者の5%が死亡、郵便配達に支障を来す。市電も間引き運転」といった見出しであふれ、その新聞も「社内罹患者増大のため頁数縮小」を通告せざるを得なかったそうです。