インフレ率の上昇は預金中心の運用に転換を迫る(写真:アフロ)

(平山賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

最強の資産運用手法だった定期預金

 金融資産の運用では、毎年毎年の物価上昇のペース(インフレ率)を金融資産の拡大ペースが上回らないと、その資産は目減りしてしまうことを意味する。そのため、資産運用の成果は、インフレ率を上回ることが最低限求められるわけである。

 しかし、ここ数十年、わが国では、インフレ率がゼロ%周辺で推移していたため、インフレ率を上回らなければいけないという意識が薄くなっているのではないだろうか。預貯金の金利も、ほぼゼロ%水準であったことから、気にしなくなっているというのが実情だろう。

 そこで、以下では、インフレ率の推移とわが国の定期預金金利(1年)の推移を確認することを通して、今後の金融資産の運用について考えてみたい。

【図1】定期預金金利(1年)とインフレ率
拡大画像表示

 図1を見ると、興味深いことに1970年頃までは金利が規制されていたため、ほぼ定期預金金利が5%程度で安定的に推移していたことが確認できる。さらに1950年代も1960年代も、平均してみれば定期預金金利は、消費者物価指数の前年比伸び率であるインフレ率を上回っていたため、多くの預金者は、物価が上昇しても、その上昇率よりも高い金利を得ることが可能だった。