なぜ急に債務救済に踏み切ったのか
ここで冒頭の問いに戻ろう。
先に述べたとおり、中国の王毅外相は、本年8月18日、中国・アフリカ協力フォーラム閣僚級会議成果実施調整者会議をオンラインベースで開催し、突如、その場において、アフリカの最貧17カ国に対し、無利子融資案件で、2021年末までに弁済期限がきたものについて、債務の弁済をすべて免除すると述べた。
同大臣の発言では、これら17カ国がどこの国か、無利子案件は何かは、明らかにされなかったが、その総額は100億ドルに達すると述べたことから、大きな反響を呼んだ。これは、中国の対外支援政策が大きく変わったことを意味するのであろうか? あるいは、その背後に何か特別な思惑があったからなのであろうか?
この問いに対する答えは、意外なほど単純である。今回の発表は、一見すると中国の経済支援政策の大きな変更に見えるが、実はそうではなく、従来からの路線を踏襲したに過ぎない。
中国では、最貧国(low income countries)に対しては無利子融資を提供してきているが、無利子融資については政府機関(以前は商務部、現在は国家国際発展合作署)を通じて提供していることから、従来より、外交上必要とされれば、政府の判断で(二国間協議を通じてではあるが)、特定国に対し、債務の棚上げや帳消しを認めてきた(これが、銀行から提供されている対外経済協力資金である場合は、債務の帳消しは、当該銀行の財務状況の悪化に繋がるので、通常は実施されない。ただ、輸出入銀行の場合、例外的に貸し付け条件の見直し等が行われることはある)。