都心ルート継続にこだわる国交省

 この疑問に対し、国土交通省は、航空需要が回復したときの本格運用への「助走期間」(2020年3月の参議院予算委員会で赤羽一嘉国交相答弁)とするありさまである。

 政府は新型コロナの水際対策を緩和しているが、国別訪日客数トップだった中国は依然としてゼロコロナ政策を下ろしておらず、同国からの訪日客は復活しそうにない。コロナ以前に戻るのにあと何年かかるかわからない。インバウンド4000万人というのも最初から結論ありきで、都心ルートは現場の管制官に意見を聞かずに強行されたものだ。

 百歩譲って、いずれインバウンドが4000万人になるにしても、それまでは元の海上ルートに戻しても良いのではないか。こうした考えに異論を差し挟む方はそれほどいないだろう。

 本邦航空会社の運航規程(オペレーションマニュアル、略してOM)には、安全に着陸するためのルールである「スタビライズドアプローチ」が定められている。その中に最終進入下での降下率は最大毎分1000フィートと規程されている。

 このスタビライズドアプローチの運航方式は、私が日本航空(JAL)の安全推進部に配属されていた1990年代に1年間の社内論議を経て決められたものだ。その後、国土交通省の賛同を得て、今日では日本の航空会社全てが採用している。

 その概念は、着陸に向かう航空機の最終進入時、定められている安全基準(方式によって高度が定められている)を1つでも満たしていなければ進入をやめ、いったん進入復行(ゴーアラウンド)して再度進入を試みるか、他の空港へ向かう(ダイバート)とするものだ。条件が悪いときに着陸を強行してはならないという考え方である。

 この運航ポリシーによって、1985年に起きたJAL123便事故以来、日本の航空会社では重大な着陸事故はなく、1人の死亡者も出していないのである。