9月8日、安倍晋三元首相の国葬を巡り閉会中審査に臨んだ岸田文雄首相(写真:つのだよしお/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 国民を分断する「国葬」なんて、聞いたことがない。安倍晋三元首相の「国葬」のことだ。国民の多くが弔意を表し、国をひとつに追悼するからこその「国葬」のはずだ。

 それは世論調査の数字にも現れている。読売新聞が今月2日から4日にかけて行った全国世論調査では、安倍元首相の「国葬」の実施を決めたことについて、「評価しない」が56%、「評価する」38%だった。前回8月5日から7日にかけて実施した調査では、それぞれ46%と49%だったから、わずか1カ月で逆転したどころか、「評価しない」が半数を上回って6割近い。

 また、岸田内閣の支持率は前回(8月10から11日の調査)の51%から50%と、ほぼ横ばいだったのに対して、不支持率は前回の34%から41%に上昇している。まさに5:4の比率は分断の象徴で、その背景に「国葬」が影響しているはずだ。これから出てくる報道各社の世論調査の結果も同じようなものだろう。

 こうした中で、8日には衆参両院の議院運営委員会で、岸田文雄首相も出席して「国葬」に関する閉会中審査が行われている。

「国葬決定」の理由、結局は自民党に都合のいい理屈

 岸田首相は冒頭で、「国葬」の実施を決めた理由について、(1)安倍元首相は憲政史上最長の8年8カ月にわたり首相の重責を担ったこと、(2)東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的外交の展開を主導し平和秩序に貢献するなど、大きな実績を残したこと、(3)各国からの敬意、弔意に対し、日本国として礼節をもってこたえること、(4)民主主義の根幹たる選挙中での非業の死であること、以上の4点をあげて、「国葬が適切だと判断した」とし、「安倍氏を追悼するとともに日本は暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と述べている。

 だが、そもそもこの期に及んで国会で説明するまで、世論の支持も得られないまま、閣議決定だけですべてを決めてきたことが、民主主義にふさわしいことか、首を傾げたくなる。どこか中国共産党を連想させる。