終戦記念日の8月15日、千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花する岸田文雄総理(写真:つのだよしお/アフロ)

(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 安倍晋三元総理が奈良市で銃撃されて亡くなるという衝撃的な事件からまもなく2カ月が過ぎようとしています。メディアでは現在も関連報道が続いていますが、その方向性を私は憂慮しています

 というのも、「この政治家は統一教会と関係があるかないか」ばかりになってしまっているからです。「この政治家は献金を受け取った」「教団のイベントに祝電を送った」「世界日報の取材を受けた」という具合に、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係がちょっとでもあったらアウトと言わんばかりに、まるで魔女狩りのようになっています。

 今回の事件を契機として、政治と宗教とをしっかり切り離すということ自体はよいことだと思います。“霊感商法”で異常に高額な商品を売りつけたり、家庭を破壊するほどの寄付金を信者に求めたりするような宗教団体に、政界の中枢にいる人々が票やマンパワー、資金の面で大きく依存しているような状態は、とても国民の納得を得られるようなものではありません。

 ただ現在のメディアは、統一教会とのかかわりを「あるか、ないか」の二元論にして、少しでも「ある」政治家を見つけ出し、つるし上げるような報道に終始しているように感じています。

 これが果たして本筋の議論なのでしょうか。

選挙の実務の中で「ボランティアの身体検査」など非現実的

 私も政治家の選挙の手伝いをしたことが何度かあります。そうした実務を経験した立場から思い返すと、選挙というものは、猫の手を借りたいほど忙しく、お金もかかります。そこに「手伝います」という人が現れたら、どのような人でもありがたい存在です。しなければならない仕事がさくさんある中で、「この人はどういう人か」「どこかの組織から送り込まれた人なのか」などと、一人一人の背景を精査することはまず困難です。
 また、選挙の候補者は、少しでも名前と顔を売るために、分刻みのスケジュールの中、さまざまな団体や集会に足を運んでいます。そういう訪問先の中に、宗教系の団体があることも不思議なことではないのです。