統一教会の創始者、文鮮明氏の葬儀では各国から参列者が訪れた(写真:AP/アフロ)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

◎前編「脱北者がひもとく、統一教会による北朝鮮支援の30年史」から読む

 北朝鮮住民は、統一教会を南北統一のための「統一宗教」と認識している。「統一」という単語が与える印象のためである。

 ただ、統一教会の中身については、北朝鮮最高指導部と既得権層は理解しているが、一般住民にはほとんど知られていない。30年にわたって進められた、統一教会の対北食糧支援やベビーフード支援、教育支援、山林復元のための苗木支援などについて、北朝鮮政府は一般住民には知らせなかったからである。

 それについて、筆者も所属していた保安部の幹部は、「統一教会が進めた対北事業は一般住民を相手にしたものというより、北朝鮮最高指導部の要求によって進められた事業が多い。北朝鮮社会の特性上、そうするしかなかったということではあるが、今後、統一教会の対北事業方針は最高指導部の要求よりも一般住民を直接相手にした事業に転換される可能性が大きい」と見通している。

 それは本当に可能だろうか。統一教会は対北事業を方向転換するのだろうか。統一教会が目指す、これからの対北事業方針とその展望を考えてみよう。

 統一教会はこれまでに、平和自動車総合工場、平和自動車部品会社、平和ガソリンスタンドなどの大きな事業に投資し、北朝鮮最高指導部の要求を満たすのに力を注いだ。平壌の最高級ホテルの一つである普通江ホテル、安山ホテル、安山館のようなホテル・サービスにも投資を惜しまなかったのも、そのためだ。

 これは、統一教会が対北事業に投資する目的が、収益性よりも北朝鮮への宣教と布教に重点を置いているからである。

 文鮮明総裁は対北事業を始める際に、北朝鮮最高指導部の心を捕らえることを一次的な目標としたのだろう。最高指導部の考えと心がそのまま法律になり現実となる北朝鮮体制の特性上、仕方のない選択だったといえる。

 その結果として、統一教会は主教不毛の地である共産国家に自分たちの公式教会堂を建てた、北朝鮮建国史上初の宗教団体になった。