韓国光復軍創軍第79周年記念式で祝辞を述べる光復会の金元雄氏(当時)(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 日本統治時代や連合国の軍政時代に朝鮮独立をかけて戦った独立運動家と、その子孫たちによる団体として知られる「光復会」。不正疑惑で2022年2月16日に会長職を辞任した金元雄(キム・ウォンウン)氏の不正疑惑がさらに明らかになり、韓国で再び物議を醸している。

 退任前に問題視されていた金氏の不正は、国家功労者の子女奨学金支給という名目で国会内で運営していたカフェ「ヘリテージ815」の収益を個人的に使用していたというものだった。不正発覚当時、世間に公表された横領金額は約7000万ウォン(約714万円)である。

 当時から、「監査だけでは金銭取引過程を暴きにくい部分もある。警察の捜査によっては今後さらに横領金額が増える可能性がある」と言われていたが、見立て通り横領額が増えた。

 今回新たに明らかになった不正は次の通り。

1.独立運動家の漫画出版事業における印刷費水増し計上:5億ウォン
2.カフェ「樹木園」の工事費水増し計上:9800万ウォン
3.見返り寄付金の授受:1億ウォン
4.寄付金の目的外使用:1億3000ウォン
5.法人カード私的利用:2100万ウォン

 横領金額は合計約8億4900万ウォン(約8660万円)相当となった。

 法人カード私的利用の用途としては、金前会長本人が食べたキンパ(韓国式のり巻き)やトッポキ、パンの購入をはじめ、通院費や薬代、銭湯代、かつら代などが含まれていた。余計な話だが、彼のかつら疑惑は本当だったようだ。

 国家報勲処(愛国者と退役軍人に関する政策の立案と実施を行うところ)は、金前会長とこれに関与した元光復会職員4人など計5人を業務上背任などの疑いで検察に告発し、監査結果資料も渡す計画だという。

 同処は加えて、「金前会長が公告・面接なしに知人7人を任意に光復会に採用し、事後に面接票を虚偽で操作するなど不公正採用をした事実も摘発した」と明らかにした。

 金前会長の在任期間は2019年6月1日から2022年2月16日までで、この間、光復会は計15人の職員を新規採用した。そのうちの約半数が縁故採用で、中には金前会長の国会議員時代の補佐官と特別補佐官、前職の市議会議員などが含まれていたそうだ。

 ただし、縁故採用については刑事法的違法性を断定しにくく、告発対象からとりあえず除外されている。