米韓軍事演習に臨む尹錫悦大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 8月22日、米韓合同軍事演習が予定通り開始された。以下に記すような、米韓関係にまつわる様々な出来事がまるでなかったように、である。

 その3日前の8月19日、北朝鮮の金与正(金正恩の妹)氏は、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「大胆な構想」を一蹴した。北朝鮮が非核化すれば、韓国が様々な経済的支援をするという構想である。

 約10年前、リビアのカダフィ大佐は核開発を捨てた後に失脚した。現在のウクライナも、核兵器を捨てた結果としてロシアに攻められている。

 停戦中とはいうものの、戦争相手国から非核化を条件に経済支援するという提案は、金与正氏でなくとも馬鹿げた話と思うだろう。「そんな馬鹿なことをやるのが韓国」というのは、日本でも著名な米国の韓国研究者の感想である。

 さらに、その2日前の8月17日、北朝鮮は2発の巡航ミサイルを黄海に向けて発射した。日本のメディアは「米国は弾道ミサイルの射程内にある」という米国の発表を受けて、同22日からの米韓合同軍事演習をけん制していると報じた。

 報道の通りであるならば、韓国の「大胆な構想」は全くの空振りだったどころか、タイミングまで間違っている。

 一方、8月5日にペロシ米下院議長が訪韓した際に、尹大統領は同じソウルにいたにもかかわらず、ペロシ米下院議長と面談しなかった。この点について、米国をはじめとする世界のメディアは大きく取り上げていない。それはなぜか。

 日本に最も近くて遠い国──。韓国には、日本人には理解できないことが多々ある。

 本稿では、この一見、常識から外れているような朝鮮半島の南の国について、中でも日本との友好関係を単純には進められない現実について見ていこうと思う。読者の皆さんに、今後の参考としていただけるなら幸いである。