(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)
最近、北朝鮮住民の間で統一教会に対する関心が高まっている。安倍前首相を暗殺した動機に統一教会があると述べた犯人の陳述内容が対北ラジオ放送で報道され、一波万波を呼んだからだ。
北朝鮮中央保安部の知人は、北朝鮮に進出している統一教会の関連企業の存在と共に、以下のように指摘する。
「統一教会が巨大な組織であるということは知っていたが、安倍前総理の暗殺原因になるほどとは知らなかった」
「今、北朝鮮当局はこの事実が住民の間に広がるのを恐れている。今回の不幸な事件が、北朝鮮と30年間にわたって良好な関係を続けてきた統一教会に対して、住民が否定的なイメージを持つ危険性があるからだ」
北朝鮮は、なぜ統一教会に対する北朝鮮住民の関心に敏感に反応するのだろうか。統一教会は、どのようにして北朝鮮と持続的な関係を築くことができたのだろうか。布教と宣教を目的にした統一教会の北朝鮮進出過程はどのようなものだったのか。そして、対北支援を狙って北朝鮮当局は統一教会をどのように利用してきたのだろうか──。
30年間にわたって続いてきた統一教会と北朝鮮の歴史について、その実態を述べよう。
統一教会と北朝鮮の最初の出会い
統一教会の創設者である文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁が北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席に初めて会ったのは1991年のことだ。文総裁は同年11月30日から12月7日までの約1週間、北朝鮮を訪問して金主席と面会した。
文総裁と金主席の出会いを取り持った人物は、金剛山国際グループの朴敬允(パク・ギョンユン)会長だった。
韓国・忠清北道清州生まれの朴会長は、米国のオクラホマ大学で経営学を専攻。1986年に在日韓国人の夫と死別した後、50億円という莫大な遺産を継いで本格的に対北事業に身を投じた人物である。
1991年4月に、名古屋と平壌をつなぐチャーター便の直行路線を開設したことなどでも知られている。
そんな朴会長の紹介で金主席に会った文総裁が「主席は私より年上なので兄貴分になりますね」と挨拶したところ、すぐに金主席は「文総裁、私たちは今から、兄弟として一緒に頑張りましょう」と返答したという。これは、文鮮明総裁の自叙伝『平和を愛する世界人として』でも紹介された内容だ。
だが、文総裁と金主席が初めて会ったこの時、それぞれが別の目的を持っていたと先の知人は言う。