2018年8月、ソウル近郊の加平で開かれた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の合同結婚式(写真:ZUMA Press/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に「解散命令」を求める声が日に日に大きくなっているようだ。

 河野太郎消費者担当大臣も、霊感商法の被害対策をめぐる消費者庁の有識者検討会について、「解散命令まで消費者庁が関わったり、解散命令まで踏み込めと文部科学省に働きかけたりすることになるかもしれない」などと、出演したテレビ番組で述べている。

 テレビの情報番組にコメンテーターとして出演する弁護士も、「解散命令なら出せますよ」などと豪語しているが、みんなどこか勘違いしているか、あるいは国民を誤導させているか、はたまた、新聞、テレビなどの主要メディアもよくわかっていないようなので、ここで確認しておく。

 結論からいうと、「宗教団体」の解散命令など、あり得ない。

 それに、国が解散命令を出すことなどもない。

 いったい、どういうつもりで、猫も杓子も「解散命令」と口にするのか、よくわからないが、おそらくは宗教法人法に基づく「宗教法人」に対する解散命令のことについて、言及しているつもりなのだろう。

宗教団体と宗教法人

 宗教法人法の第81条には、確かに「宗教法人」に対する解散命令の規定がある。ただ、その前に、「宗教団体」と「宗教法人」の違いを理解しておく必要がある。

「宗教団体」とは、言ってしまえば、任意団体のことだ。たとえば、私が明日から教祖を自任し、教義を唱え、宗教を立宗して、信者を集めて団体をつくる。その時点で「宗教団体」ができあがる。

「宗教法人」とは、その宗教団体に法人格を与えるものだ。それを定めた宗教法人法は、宗教団体の公益目的を保護するために、法律によって法人格を認めて、手厚く保護するために設けられた。すなわち、宗教は公益性を目的とすることが前提とされ、一定の条件を満たした団体の申請によって、活動拠点などに応じて、国や地方自治体が認証する。法人となれば、税制などで優遇される。

 統一教会は、文鮮明が韓国で興した「宗教団体」が、1964年に日本で認証された「宗教法人」ということになる。