参院選の投開票から1カ月、岸田文雄首相が8月10日、内閣改造・党役員人事を断行した。急転直下の改造人事はなぜ行われたのか。旧統一教会の問題の早期収拾が最大の理由との見方が多いが、筆者は安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)への不評が大きく影響したとみている。
人事断行は8月2日に最終決断か
「検討」が持ち味の岸田首相が、リスクの高い人事前倒しという重大決断を下したのは8月2日と推測される。岸田首相は7月31日、米ニューヨークの国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に出席するため、羽田空港を発った。この時点で改造人事断行の気配も空気も一切ない。
8月1日、日経新聞と共同通信の世論調査結果が明らかになった。注目すべきは、国葬の不評ぶりである。日経は「安倍氏国葬 反対47%、賛成43%」。共同は国葬に「反対」「どちらかといえば反対」が計53.3%、「賛成」「どちらかといえば賛成」が計45.1%。世論は支持していないのだ。国葬を政権浮揚の一環として考えていた岸田首相は危機感を持ったに違いない。ニューヨークで衝撃を受けただろう。世界中から首脳が集まる弔問外交を行ってから秋の臨時国会に臨み、長期政権の礎を築くという算段が崩れた瞬間だった。
決断しないリーダーが大慌てで改造を行ったのは、政治日程も関係している。国葬は9月27日で確定している上、9月21日前後には国連総会での一般討論演説のため、またもやニューヨークに行く。8月27日、28日はアフリカ開発会議(TICAD)出席で、チュニス訪問を予定している。改造するなら9月上旬しかない。だが、1カ月も待っていられない。ではどうするか。今やるしかない――。