そこで件の宗教法人法第81条には、こうある。

「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる」

 その第1項第1号には、こうある。

「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」

 おそらく、「解散命令」を口にするのは、これが裏付けにあるのだろう。

解散を命じることができるのは政府ではなく裁判所

 だが、よく条文を確認して欲しい。あくまで「解散を命ずることができる」のは、裁判所だ。国すなわち政府ではない。国は所轄庁として裁判所に請求できるだけだ。

 しかも、「解散」という言葉に惑わされているようだが、これはあくまで宗教法人法に基づく「宗教法人」としての解散であって、いうなれば法人格を失うだけのことだ。すなわち、本来の「宗教団体」としては活動を制限されるものではない。宗教団体としては存続できることで、宗教の自由を保障していることになる。

 この宗教法人法第81条第1項で、解散命令が出されたものにオウム真理教がある。地下鉄サリン事件などを引き起こした「宗教法人」だ。

 あの時は、1995年に所轄庁だった東京都と検察がいっしょになって解散の請求を行っている。誰がどう見ても「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」は明らかで、翌年には最高裁で解散が決定する。宗教法人としては解散、法人格を失った。

 だが、その後も教団組織は生き残り、留まった信者たちは信仰を続けている。現在では、教祖の麻原彰晃への絶対的帰依を強調する主流派の「Aleph(アレフ)」と、事件当時の教団のスポークスマンだった上祐史浩氏が率いる「ひかりの輪」、それに主流派と一定の距離を置き独自の活動を続ける「山田らの集団」に分裂。これらの団体は、1999年に国会で成立した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」(団体規制法)による、観察処分の対象となっていて、公安調査庁による立ち入り検査や活動実態の報告が義務付けられている。